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Professor

渡部和孝研究会(ゼミ)について

2016年3月16日

 

渡部 和孝【わたなべ わこう】

 

○自己紹介

 

1995年3月 慶應義塾大学経済学部卒業

同年4月 郵政省(現総務省)入省

同年7月~1997年6月 郵政研究所 家計の消費貯蓄データの調査分析

1997年9月~1999年5月 プリンストン大学経済学部博士課程在籍

同年10月経済学修士号(MA in Economics)取得

1999年7月~2000年12月 郵政省簡易保険局 簡易保険(現かんぽ生命)の資金運用の法制度、生命保険について調査分析、外国人の生命保険業務の研修の企画実施を担当

2001年1月~6月 省庁再編により総務省郵政企画管理局

2001年7月 郵政研究所 家計の消費貯蓄データ、生命保険市場の調査分析

2001年7月 総務省退職

2001年9月~2003年9月 プリンストン大学経済学部博士課程

同年10月Ph.D. in Economics(経済学博士号)取得

2003年10月~2005年9月 大阪大学社会経済研究所講師

2005年10月~2007年3月 東北大学経済学研究科助(准)教授

2007年4月~2013年3月 慶應義塾大学商学部准教授

20013年4月 同学部教授

 

○研究分野

銀行の融資行動、銀行規制、応用マクロ経済学

 

○これまでの研究テーマ

家計の消費貯蓄行動(総務省時代)、バーゼル自己資本規制と銀行の貸し渋り・追い貸し、リレーションシップバンキング、企業間信用、銀行の組織構造と融資審査、日本政策金融公庫(国民事業、旧国民生活金融公庫)の創業期金融における役割、預金保険と銀行の融資行動におけるモラルハザード、銀行の海外進出方法、不動産融資におけるLoan to Value Ratioの役割、マクロプルデンシャルポリシー、中小企業金融円滑化法の効果、日本政策金融公庫(中小企業事業、旧中小企業金融公庫)の民間銀行の貸し渋りに果たす役割

 

○これまでの対外的仕事

総務省(郵政省)勤務、経済産業研究所:研究会メンバー、預金保険機構:勉強会メンバー、全国 銀行協会:研究会メンバー、ゆうちょ財団:アンケート調査設計、楽天銀行:懸賞論文審査委員、 金融庁:勉強会幹事、日銀:論文発表、内閣府:論文討論、国際決済銀行(BIS)、ブンデスバンク(ドイツ中央銀行)、欧州中央銀行(ECB)で論文発表、東大、京大、阪大、一橋大、東北大、筑波大、岡山大、小樽商大、慶應大、早稲田大、明治大、法政大、福岡大でセミナー講師。

 

○これまでの担当講義(下線ありは2016年度担当)

三田 マクロエコノミクス:経済成長、消費、投資、マネタリーエコノミクス:金融政策の実務、理論 計量経済学1:OLS、操作変数法の理論

日吉 経済学基礎1(ミクロ)、経済学基礎2(マクロ)、統計学、産業経済論、経済学1(マクロ)、経済学2(ミクロ)

 

○経済学への考え方

経済学は、消費者(個人)、企業(従業員)、政府などがどのように意思決定すれば、「最適」かを考える学問分野です。日々、生活し、就労するなかで人間は多種多様の意思決定を迫られる局面に直面します。それは、今日の講義に出席するかサボるかといった簡単な意思決定から、就職、結婚といった重大な意思決定まで多種多様です。経済学を学ぶことにより、自分にとってもっとも得をする(もっとも損をしない)選択をするという発想(合理的選択の考え方)を学ぶことができ、究極的には、損をしない(得をする)意思決定を自ら出来るようになるという効果があります。

なお、最適な選択はあくまでも制約を受けた最適化であることに注意する必要があります(constrained optimization)。一見、非合理的にみえる選択も、たとえば、情報の非対称性、規制、租税、取引相手の行動、人間関係といった経済の「摩擦」(friction)に制約を受けたために非合理的にみえるだけで、合理的な(自分がもっとも得をする)行動をしていることに変わりはありません。

経済学は技術的には数学(その応用分野の統計学を含む)を用いて対象となる状況を記述し各主体が最適化(消費者の効用最大化、企業の利潤最大化)することによって、何が起きるかを分析し、得られた理論的結論をデータを用いて検証するというプロセスを取ります。

経済学は日本の文部科学省のフレームワークでは「文系」に分類されているが、実際には、自然現象を数学を用いて分析する学問が物理学であるのに対し、社会現象を数学を用いて分析するのが経済学、という関係にあります。マクロ経済学、産業組織論、開発経済学、労働経済学といった経済学の応用分野は、経済学に対する工学の各分野に対応していると考えるとよいと思います。経済学研究の中心である米国では経済学の研究者は学部で数学、経済学を専攻することが多く、典型的な理系、または文理融合分野とみなされています。日本でも近年、商学部の寺西勇生先生(早稲田理工出身)のように理系出身者の研究者が増加傾向にあります。

なお、経済学は論理的な考え方、分析技術を習得する”discipline”であり、結果を暗記することが要求される学問分野ではありません。

また、経済学の研究成果は英語で議論され論文となって刊行されます。歴史的経緯から研究の中心は自然科学より米国(及び旧大英帝国の英語圏)に偏っており、有力な教科書も学部レベルですら米国で出版された教科書(の翻訳)が採択されることが普通です。したがって、数学と並んで英語の運用能力がきわめて大事です。

経済学習得の効用は、数理的(論理的)思考能力、英語の運用能力の向上であり、これは、近年の就職市場で事務系社員にも強く要求される能力です。経済学を習得し、英語力にも自信がつき、ゼミでグループ論文の作成によって対人調整能力が身に付けば就職で失敗するはずはありません。

なお、私は経済学の教育者であるとともに、研究者であり、経済現象、とりわけ、銀行に関わる減少をデータを用いて検証する実証研究に従事しています。データはアンケート調査のミクロデータ、財務データ、地域別データ、融資・売買の契約データなどです。

 

○講義への考え方

履修者数の少ない三田の講義はアメリカスタイルで、5回程度の宿題と試験の結果を基に採点

します。講義で扱ったモデルを理解することにより「考え方」を理解し、宿題、試験では講義で扱ったモデルと細部で異なるモデルを問題文をよく読んで小問にしたがって計算していくことが要求されます。細かい小問は正しい方向に誘導するために設けています。例年、講義でAを取った学生の就職状況は良好であることが過去のゼミ生の就職先のデータからわかっています。これは、よい成績を取るためには解法や事項の暗記は意味がなく、高い状況判断能力と数理的(論理的)思考能力が要求されるからです。

企業、とりわけ、いわゆる「ホワイト業務」(典型的には、金融機関の投資銀行・市場業務、事業会社の本社業務など)においては、状況判断能力、論理的対応が要求されます。ただし、マニュアルに基づいた定型的を業務を大量にこなす必要のある、いわゆる「ソルジャー業務」(典型的には銀行のリテール営業)では高い暗記能力、事務処理は要求されても、状況判断能力、論理的思考能力を問われることはほとんどありません。

なお、企業は、対人関係能力(コミュニケーション能力)を強調するのですが、これについては「ゼミへの考え方」で後述します。

 

○ゼミへの考え方:論文作成

ゼミ活動は講義内容、課題論文、独自に探した論文などの参考文献から分析技術等をインプットし、それを自分で探した問題に学んだ知識を利用して解決し、論文というアウトプットを生み出す活動です。論文は作成者が独自に書くものではなく、教員、他のゼミ員と意見交換し、論文を修正していき完成させます。

参考に、大学、政府機関等のプロの研究者の論文作成プロセスを説明します。

 

ステップ1 新聞・雑誌記事、政府・企業等の実務家との意見交換、などを通じて理解すべき社会経済現象(解決すべき問題)を識別する。

ステップ2 解決すべき社会現象を分析した先行研究を集め、これまでの議論を整理する(先行研究サーベイ)。

 

これは、自分の研究に応用できる分析手法を探すとともに、論文が既存の知識に新しい知識を加える創造的な作業であり、今まで議論されたことを繰り返してもまったく評価されないからです。今までに何がわかっているのかを調べ、何がわかっていないかを識別する必要があるのです。

 

ステップ3 解決すべき問題を理論的、実証的に分析し、その結果を説明する論文を執筆する。

ステップ4 国内外の研究会、学会などで論文を発表し、論文に対する(批判的、建設的)意見を収集、対応結果、反論を加筆する。

ステップ5 国際査読付き学術雑誌(英文のジャーナル)に論文を提出(サブミット)する。

ステップ6 審査報告書(レフェリーレポート)の批判的意見に対応、反論し論文を修正する。

ステップ5、ステップ6を論文が採択(アクセプト)されるまで繰り返す。あるジャーナルに不採択(リジェクト)された場合は、他のジャーナルに論文を提出し、採択されるまステップ5、ステップ6を繰り返す。

 

このプロセスをゼミの履修生の活動に当てはめると以下のようになります。

 

ステップ1~ステップ3 同じ、ただし、定期的にゼミで教員、他のゼミ員に途中経過を報告する。

ステップ4 ゼミで発表する。学会形式の論文発表(討論者をあらかじめ指定し論文を提出、討論者が論文を精読し批判的、建設的意見を述べる)も行う。

ステップ5 商学会学生論文集(例年11月締切)に提出する

ステップ6 同じ

 

論文作成過程は3年生、4年生で変わりませんが、3年生では11~12月の三田祭、合同ゼミ(早稲田、神戸、同志社と4大学のゼミ合同)での発表に向けて、3人のグループで論文作成することになります。4年生は基本的に単独で卒業論文を作成することになります(共著は不可ではありません)。グループ論文の作成過程では、対人調整能力を発揮しないと協力が得られず論文作成作業の進捗に重大な障害が発生します。ただし、この調整を上手く乗り切り成果を商学会学生論文集への採択という形で発表出来れば、就職活動で失敗することはまずありませんので頑張ってください。

この過程は、就活における「学生時代に頑張ったこと」でもっとも、高く評価されることです。ゼミでのグループ論文の成功により、対人関係(コミュニケーション)能力、論理的思考能力、文章能力の高さを示すことができるからです。なお、企業等の組織では、バーバルなコミュニケーション能力に加え文章作成によるコミュニケーション能力が要求されることが多いのです。企画書、起案文書、稟議書などは、短い論文といってもよいものです。

たとえば、融資の稟議書であれば、融資先の業況を財務データ等を用いて具体的に記述し、融資の必要性、返済に係る信用リスクに応じて融資条件(融資金利、融資額、担保等の保全)を提案しますが、これは、文書の執筆で行い、口頭で済ますものではありません。これに限らず、企業等ではメールの作成、企画プレゼンテーション資料の作成など、説得力のある文書の執筆能力が問われる局面が多いです。また、口頭の即妙なコミュニケーション能力に自信がなくとも的確な文書の提示によって事態を打開することも可能です。

なお三田論、卒論が優秀な場合、私のネットワーク利用して雑誌など外部メディアに公刊してもらう場合もあります。外部での成果の公刊も、就職活動では高く評価されますので頑張ってください。

 

○ゼミへの考え方:論文作成以外の活動

1 合宿

これまで合宿を実施しないのが通例でしたが、ゼミの一体(統一)感の創造、集中的な議論、学習の機会として合宿を実施します。

 

2 OB会

OB会の準備は、参加者を最大化するという目的を目指す活動であり、数値目標が明確で、成功すれば、成功体験として就職活動で高く評価されます。「わざわざ参加するのは面倒だ」というOBに魅力あるOB会を提示し、参加させるプロセスは、提案型(法人、富裕層向け)営業活動のプロセスと同じです。日程調整、店の選定、司会業務などは官庁用語で「ロジ」と呼ばれます(「ロジスティクス」の略、これに対し、会議の議論内容などは「サブスタンス」の略で「サブ」と呼ばれます)。日本の大企業は、意思決定階層までの階層数が多いのが普通で、若い社員がすぐに「サブ」(営業用プレゼンの内容の検討など)を担当することはなく、「ロジ」(プレゼンの場の設定、参加者の招集など)がきわめて重要な業務である場合が多いです。

 

3 追いコン、飲み会、スポーツ大会など

日本的組織では飲み会など社外のイベントへの参加が要求されることが多いです。近年は、イベントに参加しないと昇進に不利といった場合は少なくなっており、ましてや、飲酒を強要されることは、「ブラック」な業界でない場合、少なくなっていますが、組織においては、フォーマルな場で解決できない人間関係のいざこざ、意見対立などをインフォーマルな場で解決可能な場合も多いので、その練習と思って積極的にインフォーマルな活動を行ってほしいと思います(参加は強制しない)。スポーツ大会については、私自身球技一般のチームスポーツ苦手なため、苦手なイベントですが、銀行などの古い業界では週末にスポーツ大会が頻繁に開催され、参加が強制される場合も多いので、スポーツが苦手な場合は出場以外の場面で活躍するなどするとよいと思います。また、スポーツが出来る人が出来ない人を馬鹿にするなどの行為は厳に慎んでください。日本的組織でのこのようなイベントではスポーツ能力そのものが問われるのではなく、組織への適応能力が問われているのです。

 

○講義の履修について

 

なお、私の講義以外に、Yoann Potiron先生、藪友良先生、山本勲先生、寺西勇生先生(以上、計量経済学分野)、大東一郎先生(国際経済学分野)、牛島辰男先生(経営学分野)の各講義をぜひ履修してください。特に牛島先生の経営学は経済学の企業経営への応用であり、米国のビジネススクールで中心的に教えられている最先端の経営学です。就活にあたってどういう会社が就職するべき会社なのか(今は好業績でも将来はダメだから止めるべきなど)、がわかるようになると思います。

 

○インフォーマルな自己紹介:趣味等

 

カタイことを長々と書いてきましたが、内容から私がとてもドライな人間だと思うかもしれませんが、実際はそうではありません。確かに経済学のロジックを信望する合理主義者ですが、インフォーマルなコミュニケーションなどで態度はわりとすぐに軟化します。積極的にインフォーマルなコミュニケーションをしかけてほしいと思います。また義理堅い面もあるので、「裏切られた」と感じると激怒する場合もあるので、私をなるべく怒らせないように、常識的な「目上への人間」へのコミュニケーションを心がけてほしいと思います。私とのコミュニケーションは私よりもっと気難しくパワハラ気味の場合も多い企業の上司、クライアントとのコミュニケーションの練習になります。

球技が苦手と言いましたが、観るほうでは、幼少時から東京出身であるにもかかわらず広島カープファンとして育ち、アメリカに留学するまではカープの優勝を目指して日々一喜一憂していました。ただ、アメリカに留学し、ヤンキース戦を毎日テレビ観戦するにしたがって(英語はわからなくても野球ならわかりました)カープファンであることの空しさを強く感じ、日本プロ野球(NPB)への関心も急速に薄れました。その後は、mlb.tvの過去3年分の全試合オンデマンドサービスを契約するなど、かなりマニアックなメジャーリーグ(MLB)ファンであり、某有名ブログに「一メジャーリーグファン」として頻繁にコメントを書いたりしています。カープファンだったためにドジャース、ヤンキースで活躍した黒田博樹の熱心なファンであったのですが、カープに復帰して、悲しくなり、無関心だったカープを積極的にdisるようになりました。

学生時代は音楽に関心がなかったのですが、新卒一年目の自分の前に座っていた神戸大学体育会ボート部出身の方の強い影響でアメリカの黒人系音楽に傾倒しました。(ちなみに彼の影響で(えせ)関西弁も話すようになりました)Mariah Carey(黒人と白人のbiracial)、Aaliyah、Ashanti、Rihanna、R Kelly、Ne-Yo、Omarion、Chris Brown、50 cent、Nelly、Ja Ruleといった人達の名前を聞いたことがある人は話が合うと思います。

旅行が趣味で、大学卒業時に中国を3週間個人旅行してから、(ライトな)バックパッカーでした。院生時代は二か月間中国西部を中心に旅行しました(北京→内蒙古→寧夏→甘粛→新疆→青海→チベット→青海→甘粛→北京)。今まで訪問した外国は、韓国、香港、中国、台湾、シンガポール、マレーシア、インドネシア、モンゴル、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタン(以上、アジア)、米国、カナダ、メキシコ、ペルー(以上米州)、英国、フランス、ドイツ、スイス、イタリア、チェコ、ロシア、ウクライナ(以上欧州)を訪問したことがあります。昔は中国の西部地区(新疆、チベット、青海省)、最近は旧ソ連諸国(ロシア、ウクライナ、中央アジア)に行くことが多いです。ロシア語は話せないですがキリル文字を読むことができます。

定期健診でウエスト79センチなのを99センチと誤記録されてメタボリックと診断されてから、週6回1000メートル以上泳ぐようになりました。田町駅の裏の港区スポーツセンター、コナミスポーツの各プール、夏は芝公園のアクアフィールド芝公園などで泳いでいます。ただし競泳経験者ではありません。

アメリカ留学以来英語の習得がライフワークで、20年近くの苦闘の末、ようやくカクテルパーティーで楽しむことができるようになりました。最近は、プリンストン大学のOB組織のイベントでアメリカ人の友人達と交流することが多いです。英語のレベルが上がると日本語はおかしくなり、英単語混じりの怪しい日本語を話すこともありますがご容赦ください。

 

 

 

主要著作・論文:主要著作・論文〔著書〕 1. Prudential Regulation and the Credit Crunch: Evidence from Japan, 近刊, Journal of Money, Credit and Banking. 2. Household Saving in Japan, The Japanese Economic Review, vol. 52, no. 2 (共著) 3. Are Americans More Altruistic than the Japanese? A U.S.-Japan Comparison of Saving and Bequest Motives, International Economic Journal, vol. 14, no. 1 (共著) 4. Why Do People Save? A Micro-Analysis of Motives for Household Saving in Japan, Economic Journal, vol. 107, no. 442, (共著) 5. Do the Aged Dissave in Japan? Evidence from Micro Data, Journal of the Japanese and International Economies, vol. 10, no. 3 (共著)所属学会・団体:American Economic Association, American Finance Association, 日本経済学会海外歴 1997年-1999年 プリンストン大学大学院経済学研究科大学院生 2001年-2003年 プリンストン大学大学院経済学研究科大学院生

 

渡部和孝教授 慶應義塾大学商学部公式HP

http://www.fbc.keio.ac.jp/teacher/staff_list/watanabewakou/index.html

 

Wako Watanabe's Homepage

http://www.fbc.keio.ac.jp/~wakow/

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